マーケティングとは何か?簡単にわかるように解説してみます

マーケティングという言葉がいたるところで使われているけれど、そもそもマーケティングってどういう意味だろう?

そんな素朴な疑問に答えるために、マーケティングとは何かをできるだけ簡単に説明しました。

この記事を読めば、今マーケティングという言葉がどのような意味で使われているのか、そして、小さな会社や個人がマーケティングを取り入れるためにやるべきことがわかります。

「マーケティング」とは?簡単に言うと?

マーケティングとは何か、について調べてみると人によっていろいろな説明があります。

専門的な難しい定義は抜きにして、思いっきり簡単に言うと、「顧客を知り、顧客が望む商品をつくり、その商品が顧客に届く仕組みをつくること」ということができます。

つまり、単に商品をたくさん売る方法といったものではなく、ビジネスの設計図のような側面もあるということです。

『マーケティングは売れる仕組みをつくることだ』と言われることも多いですが、これでは少し言葉足らずだと思います。

その理由を説明する前に、教科書的なマーケティングの定義をいくつか見てみましょう。

「マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」

日本マーケティング協会より引用

う~ん、難しいですね。日本マーケティング協会による定義ですが、広い視野をもって行う総合的な活動なんだな、ということはわかります。

・・・真のマーケティングは顧客からスタートする。すなわち現実、欲求、価値からスタートする。~中略~だがマーケティングの理想は、販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。

『マネジメント・エッセンシャル版』P.F.ドラッカーより引用

少しわかりやすくなりましたね。これはドラッカーによるマーケティングの解説ですが、顧客の望むものに商品・サービスを合わせて自然と売れていくのが理想のマーケティングだということのようです。

マーケティングの意味が分かりにくい理由

専門家の言葉だけでなく、さまざまな人が違うことを言っているように聞こえるのはなぜなのでしょうか?わかりにくさの主な原因についてお話しします。

プロセス全般を意味している

『~市場創造のための総合的活動である』という日本マーケティング協会の定義にもあるように、マーケティングは商品を販売するまでの全体の活動を意味します。具体的には、市場調査、商品の開発・製造、輸送・保管、宣伝・販売の全てに関わることなので、説明する人が主にかかわっている分野によって説明の仕方が少しずつ変わってしまうということです。

時代の変化によって定義が変化している

時代の変化と共にマーケティングの定義も変化しています。

マーケティングの神様と呼ばれるフィリップ・コトラーは4つの時代に分けてその変化を説明しています。

マーケティング1.0

製品中心のマーケティングの時代。モノ不足の時代で、つくれば売れた時代で、どのように効率的につくったものを売るかがテーマになります。

マーケティング2.0

消費者中心のマーケティングの時代。消費者志向の高まりから、顧客が欲しがるものをつくる差別化がテーマとなりました。

マーケティング3.0

価値主導のマーケティングの時代。機能的な満足だけでなく、精神的な満足も目指すもので、顧客だけでなく世の中をより良いものにするという視点も重視されるようになりました。

マーケティング4.0

顧客の自己実現の時代。商品やサービスを通じて顧客自身の自己実現を手助けすること、そして最終的には顧客自らがブランドの伝道者になってもらうことが重要とされています。

マーケティングが無かった場合どうなるか

マーケティングが「顧客を知り、顧客が望む商品をつくり、その商品が顧客に届く仕組みをつくること」なのであれば、マーケティングを取り入れてなかったらどうなるのでしょうか?

まず商品・サービス自体が顧客が望むものではない可能性が出てきます

販売者の独りよがりなものであったり、昔は売れた(望まれていた)けれど、顧客の変化に対応できずにいるので、「なんで売れないんだろう」「昔はよく売れたのになあ」といった状態になってしまいます。

次に、顧客に届く仕組みがないと、常に商品を買ってくれる人を探し自分で届けるしかありません。百科事典を車に積んで、一軒一軒の家を訪問販売するようなイメージでしょうか。あるいは、多くの人に存在を知ってもらう方法もないので、ただひたすらお店の中から前の通りを眺め、お客様が来るのを待っているようなものです

効率の悪さを受け入れ、つらい状況を耐え忍ぶことの反対にあるのが、『改善』で、そこから『仕組み』が生まれてきます。

仕組みとは、ものごとが上手くいくように工夫することであり、誰がやっても同じ結果になるような手順・やり方をつくることです。

「効率が悪いなあ」「現状を変えたい!」そんな思いが少しでもあるなら、マーケティングの手法を取り入れてみてはいかがでしょうか。

「マーケティング」と「セールス・販売」の違い

マーケティングとセールスが同じものだとする考え方もありますが、今のマーケティングはとても幅広い活動を含んでいるので、セールスもマーケティングに含まれると考えることができます。

長い間セールス・販売は商品をどうやって売るかを考え実行することでした。商品の特徴や経済的な利点を直接アピールすればよかった時代はマーケティングと同じ意味だったとしても、市場の変化に合わせて、マーケティングが意味することは変化しつづけてきました。

それに対して、セールス・販売は相変わらず商品をどう売るかという商品からスタートする考え方が中心であることと、商品を売るためのスキルやテクニックという側面を含んだものなので、今の時代はマーケティングとセールスが同じとは言えません。

集客とマーケティングの違い

集客もセールス・販売と同様にマーケティングに含まれるものだと言えますが、マーケティングが変化したように集客もその方法は変化しています。

しかし、マーケティングが市場調査や商品開発も含めて語られるのに対して、集客はそこまで広い意味をもちません。

マーケティングの最終的な目的は、商品やサービスを効率的に売ることではない?

最後に、ここまで読んでいただいたあなたはきっとビジネスについて真剣に考えている熱心な勉強家だと思うので、もう少し込み入った話をしたいと思います。

『マーケティングは売れる仕組みをつくることだ』
『マーケティングの目的は効率よく販売すること』

そんな話をよく聞きます。

しかし、『販売して利益を得ること』は結果です。

日本マーケティング協会も、マーケティングは市場を創造するための総合的な活動と言っており、製品を売ることを目的とした活動とは言っていません

これはドラッカーが『マネジメント』の中で話している『企業=営利組織ではない』という話そのものなのですが、この本の中でドラッカーは、

商品・サービスの販売とそこから得られる利益は企業にとって必要不可欠な条件であって目的ではない。そして利益は企業活動の評価基準として、重大な関心を払わなければいけないと言っています。

利益は、個々の企業にとっても、社会にとっても必要である。しかしそれは企業や企業活動にとって、目的ではなく条件である。企業活動や企業の意思決定にとって、原因や理由や根拠ではなく、その妥当性の判断基準となるものである。そのような意味において、

~中略~

利益に対しては重大な関心を払わざるをえない。


『マネジメント・エッセンシャル版』/P.F.ドラッカーより引用

オムロン株式会社の創業者である立石一真氏はわかりやすくこう言っています。

『会社にとって利益は空気と同じ。空気がないと生きていけない。しかし、空気を吸うために生きている人間はいない』

最初に『マーケティングは売れる仕組みをつくること』この表現は少し言葉足らずだといいましたが、その理由は、販売することを目的としているようにしか聞こえないからです。

マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、製品とサービスを顧客に合わせ、おのずから売れるようにすることである。

『マネジメント・エッセンシャル版』/P.F.ドラッカーより引用

この『おのずから売れるようにする』の部分だけを抜き出して、マーケティングの理想は放っておいても勝手に売れる状態にすることだ、と考えているように感じるわけです。

しかし、『おのずから売れる』のは『顧客を理解し』『製品とサービスを顧客に合わせ』た結果であるはずです。

重要なのは『真のマーケティングは顧客からスタートする』ことであり、顧客を理解し、価値提供がうまくできれば『おのずから売れる』ようになり、利益も手に入るということです

販売することが目的だったのはマーケティング1.0の時代であり、この商品・サービスをどうやって売るか、という発想から抜け出さなければいけません。

顧客を理解してどのように価値を提供できるか、この発想への転換ができると、ビジネスは大きく飛躍します。

このような話を、『大企業向けの話』あるいは『きれいごと』として片付けてしまう人も多いですが、小さな会社が、顧客への価値提供に取り組んでいる事例はたくさんあります。

・杉山フルーツの事例

静岡県富士市にある吉原商店街はお店の半数がシャッターを下ろしているような、どこにでもある商店街です。そのさびれた商店街にあるのが杉山フルーツという果物屋さんです。

家族経営の小さなお店で、ありふれた普通の果物店に見えますが、売上は右肩あがりです。

最初から順調だったわけではなく、1994年(平成6年)商店街にあった大規模スーパーが撤退した後、周りのお店は次々と閉店し、このままでは店がつぶれてしまう!という危機感からお店の改革が始まります。

生き残りをかけた改革の1つ目が高級品の贈り物需要に特化すること。2つ目がお客様が楽しんでもらえる変わったイベントを開催すること。3つ目が親切丁寧な接客でした。

従業員みんなで、「これはお客様の心を満たすだろうか、ほんとうのものだろうか」と検討すると言います。自分たちが食べて満足しない商品は売らないという主義です。~中略~たとえば、みかんを市場から仕入れると、箱の中に五段、六段と入っていますが、上の方は大きいけれど、下は小さかったりつぶれていたりということがよくあるそうです。それをいっしょくたに山積みして店頭に、というのが普通の店です。

杉山フルーツでは一箱買ってくると、いったん全部バラして入れ直し、まがい物やいたんだものを排除して店頭に並べます。

日本でいちばん大切にしたい会社より引用

また、結婚式を間近に控えた若い女性の話があります。

その女性は杉山フルーツの話を聞き、結婚式の引き出物をつくって欲しいとお店を訪れます。しかし、若い二人が言う予算では希望するような内容のものをつくるのは不可能に思えました。

「しかしせっかくうちを選んでくれたのだから、何としてもこの方たちの夢を実現しなくてはいけない」「なんでこんなに少ないの」とか「なんだ、みすぼらしい引き出物だな」と思われ、結婚式の感動を台無しにしてしまうことを、何より恐れた杉山フルーツは、総出でいい物を揃え、ラッピングにも工夫を凝らしてつくりあげたそうです。~中略~やがて間近に結婚式を控えたその女性が、引き出物を取りにやってきました。見ると、きれいにリボンが飾られた豪華な引き出物が用意されています。店内に飾られている商品の値札と比べても、「自分の頼んだ予算のなかでできるわけがない」と彼女はひと目でわかったでしょう。

帰りがけに、「ご結婚、おめでとうございます。これはお店のスタッフからのささやかですが贈り物です」と言ってプレゼントを渡したところ、その女性は感極まって、泣き出してしまいました。それを見たお店のスタッフも、全員涙をながしたそうです。

日本でいちばん大切にしたい会社より引用

地道な努力を続けた結果、「有料経営食料品小売店全国コンクール」で賞をもらったというニュースが新聞に小さく発表された際にも、固定客から「杉山さんのお客で良かった」「自分のことのようにうれしい」という電話が何十本も届いたといいます。

そんな杉山フルーツの売り場面積あたりの売上高、従業員一人あたりの売上高は同業他社の2倍に達し、4千円~1万円のマスクメロンが年間で7000~8000個も売れるそうです。

参考文献:日本でいちばん大切にしたい会社

・中央タクシー株式会社の例

1998年、冬季オリンピックが開催される長野県はオリンピック特需にわいていました。タクシー業界も同じで、各国のメディアが通常料金の2~3倍の料金で車両を借り受け、どのタクシー会社もオリンピックの開催数か月前には全ての車両が貸し切りというバブル状態です。

そんな一生に一度の稼ぎ時に、中央タクシーの宇都宮社長と乗務員は『オリンピック特需』を捨てて『地域のいつものお客様』を選びます。そのきっかけは乗務員の何気ない一言でした。

「社長、オリンピックで貸し切り車ばかりのなか、いつわが社をご利用いただくおじいさんやおばあさんはどうされるんでしょうか?病院や買い物にはどうやって出かけるんでしょうね?」と言ったのです。

雷に打たれるとは、まさにこのことです。二十年にわたって『お客様主義』を貫いていたはずなのに、私にはまだ本当にはわかっていなかったのです。本当に大切にしないといけないお客様は誰なのかを、乗務員に教えていただきました。

日本でいちばん大切にしたい会社3より引用

オリンピック関係の仕事は断り、通常営業を続けた結果、オリンピック期間中の売上は市内で最下位になったものの、市民からの信頼を獲得した中央タクシーは、9割が電話予約で埋まるようになったといいます。

「私、乗ってしあわせ。中央タクシーの方はみな心づかいしてくれます。私、乗ってしあわせを感じます。(手が震えていて、思うようにかけずごめんなさい)」
~中略~
そのおばあちゃんは「本当のことを書いただけですよ。私は乗らないときも、街で中央タクシーを見るとホッとするんです」と言ってくださったそうです。

「これまでの苦労が報われた」と感じた宇都宮さんは涙したといいます。

日本でいちばん大切にしたい会社3より引用

中央タクシーは経営理念として「お客様が先、利益は後」を掲げています。

また、憲章には、「われわれは長野県民、新潟県民の生活にとって必要不可欠であり、さらに交通弱者・高齢者にとってなくてはならない存在となる。私たちはお客様にとって、いつまでもこのうえなく、なくてはならない人としてあり続け、この人がいてくれて本当に助かりますと、思わず涙とともに喜んでいただける。わが社はそんな人々によってのみ構成されている会社です」と書かれています。

参考文献:日本でいちばん大切にしたい会社3

杉山フルーツも中央タクシーも決して販売や利益を目的に活動をしてお客様から支持されたわけではありません。

顧客が望むことからスタートしてどのような価値をどうやって届ければいいのかについて試行錯誤を繰り返してきたはずです。

マーケティングの始まりは顧客であり、それは会社の規模は関係ないということです。

まとめ

  • マーケティングとは、顧客を知り、顧客が望む商品をつくり、その商品が顧客に届く仕組みをつくること。
  • マーケティングの定義は広く、市場調査、商品の開発・製造、輸送・保管、宣伝・販売の全てを含んでいる。
  • マーケティングは商品ではなく、顧客からスタートして考える。
  • マーケティングの目的は売ることや利益を得ることではなく、市場創造であり、経営理念の実現であり、顧客満足の実現である。